‐Ｆｅａｒ‐

　そっと玄関のドアを開けて締め、そっと歩く。音を立てないように。

　まるで遅く帰ってきて親に見つからないようにしている子供の様だ。

　だが、その時ガラッと扉が開き、静寂が破られる。

「おはようございます。」

「わっ！優太君起きてたの？」

「えぇ、さっき起きました。もう朝の９時ですよ？」

「そ、そっかぁ。仕事で徹夜しちゃって…、朝になっちゃった。」

「大変でしたね。お疲れ様です。」

「ううん、大丈夫よ。シャワー浴びてくるね。」

「はい。」




　ジャアァー…‥


「優太君…変に思ってないわよね？まぁ、いいけど…。でも教育に良くないわ。」

　理恵菜はシャワーを浴びながら呟いていた。

「仕事も、プライベートも…前に進めてないわ。これが答えなのかしら…。」

　キュッ　キュッ

　蛇口を締め、理恵菜は大きく息を吐いた。