‐Fear‐
 中学校の正門の前で煙草を吸っているスーツ姿の若い男がいる。
吉岡だ。

「ふぅーーっ…。」

 門から出てきた教師らしき男が吉岡に話しかける。

「…どちら様ですか?」

「あ、志水先生。今お帰りですか?私、こういうものです。」

 警察手帳を見せる吉岡。

「警察の方?私に用なんですか?」

「ええ。小林優太君の事件の事で。」

「そうですか…。すいませんが、私じゃお力になれないですよ。」

「いえいえ、少し聞きたい事がありまして。」

「何か?」

「最近、優太君と妹の香澄さんに会ってますね?」

「ええ、心配していたので。自分の生徒に会っちゃ変ですか?」

「いえ。心配ですものね。新島英明君の時も心配しましたでしょ?」

「え?」

「以前、新島英明君もあなたが担任でしたね。」

「……。」

「少しお話を伺いたいのですが、署までよろしいですか?」
< 53 / 60 >

この作品をシェア

pagetop