‐Fear‐
 警察署の屋上‐

 干潟と吉岡が手摺りにもたれながら話している。

「俺、納得いかないっすよ。」

「強引な捜査で自殺に追い込んだ。そう報道されてもおかしくないらしい。まだ実際にはされていないがな。」

「そんな…。ひどいですよ。さんざんプレッシャーかけていたくせに。」

「吉岡。あまり上に逆らわん方がいい。お前はまだ若い。定年待ちの爺とは違うのだからな。」

「でも…。」

「俺を思ってくれるのなら、事件を解決してくれ。」

 そう言って、立ち去ろうとする干潟。

「ちょっと待ってください!」

「ん!?」

 自分の胸ポケットから煙草を取り出し、それを差し出す。

「……。」

 無言で煙草を受け取り、口にくわえる干潟。

 吉岡が手を添えながら火をつける。

「ふーっ…。」

「どうですか?久しぶりの煙草の味は。」

「ふん、こんな味だったかな。あまり美味く感じねぇや…。」

 干潟が苦笑いを浮かべた。





< 60 / 60 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop