‐Fear‐
 コンコンコンコン…

「あ、はい。」

 ドアを開け入って来たのは干潟だ。

「どうも、日比野さん。いや~、暑いですね。階段昇るのも辛いですな。」

「はぁ、すいません。」

「それで、どうですか日記の感想は?」

「そうですね…。文章も“違う人格が怖い”“本人は気付いていない…言った方がいいのか…”など曖昧というか具体的な事例が書いてないので何とも。」

「それで、自殺の可能性は?」

「え?」

「自殺の可能性はありますかね?」

「…私は優太君の心理状態、多重人格について考察しているので、それは何とも。」

「そうですか。いや~、なかなか自分の子供の多重人格を苦に自殺した夫婦ってのもいないし、再婚ですからね。心理科の先生に聞いてみたくてね。」

「私はただの心理カウンセラーです。自殺か他殺かなどわかりません。」

「いや~そうですな、失礼しました。また優太君連れてきた時にはよろしくお願いします。」

 干潟を見送りながら日比野は考えていた。

 他の所へ行ってしまう前に、私が優太君を救ってあげなければ…。
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