‐Fear‐
 窓から差す月の光。月は…綺麗だな。
今日何曜日だっけ?…どうでもいいか。
此処ドコだっけ?…どうでもいいか。
パソコンやりたいなぁ…。

 優太は警察が用意した部屋の布団の上で横になっていた。
署内では優太を精神病院に入院させるか検討されているが、当の本人は意識的に頭を使わないようにしていた。
色々考えだすと嫌な記憶も思い出すし、辛いのは嫌だ…。


 何も考えないようにしよう…
 何も考えないようにしよう…





 窓から差す陽の光。鳥の囀り。

 朝か…。寝た気しないな。でも行かなくちゃ…。

「ん…。」

「ごめん、起こしちゃったか?」

「今日も…仕事?休みじゃなかったの…?」

「あの事件で今は忙しいんだ。」

 目を擦りながら話す裸の女を横目に、若い男は着替えている。
吉岡だ。

「今日は家に帰れよ。仕事徹夜になる事もあるから。」

 女は口を尖らせた。





 今日は優太を日比野の所へ連れていく日。
干潟と吉岡は優太を乗せて車で向かっていた。

「お前、彼女と結婚せんのか?」

「え?あぁ…まだ。」

「警察官、刑事は早く結婚した方がいいぞ。」

「はい。でもまだまだ新米なんで、そのうち。」

「ったく。最近の若いもんは遊んでばっかりだな。」

 優太はただ黙って窓の流れていく風景を眺めていた。
< 9 / 60 >

この作品をシェア

pagetop