菜綱の夜
突然男は言う。
「なんだと?」

俺は口にだして言ったつもりはない。

こいつ俺の心を読んだのか?それともリアルな夢?
「お前は一体誰だ!」
「俺の名前は湯太郎」

馬鹿な、ユタロウだと!

こいつ俺をからかっているのか?

それとも本当に、俺は確かめたい事があった。

それは
「確かにお前の妹にはこの前会った。」

俺はもう心が読まれた事など気にしなかった。
「どこでだ!俺にも会わせてくれ!お前は願いを叶えてくれるんだろ!」

ユタロウはゴーグルを後頭部にズラすと冷たい目で俺を見た。
「俺は誰の願いも叶えてない。それに俺はお前の願いを叶えられない」
「お前は不治の病を治したのも、貧しい人間を助けたという噂も全部嘘なのか?」
「病気は治った。人並みの生活もできた。」
「なら、俺の」
「それは無理だ!」
何故、俺が妹を見殺しにしたから?

あれは事故だ。

何故俺だけが、怒りにかられた俺はユタロウの胸倉に掴みかかった。
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