菜綱の夜
~愚者の夜~
街で行き交う人々、その全ての人々が俺の存在を認めようとしない。
「俺はここにいる!おい!オッサンは俺が見えるよな?」

道の隅で虚ろな目をして俺の方を見ているホームレスがいた。
「あんたはダメだ。死んでる」
「あ?俺が死んでる?あんた俺が見えてんだろ?」
「ワシも死んどるよ。」

嘘だ!皆がよってたかって俺をハメようとしてるんだ。
「俺は死んでなんかいない!」

ふと俺は公園の事を思い出した。

菜綱、あの子は食事をしていた。

そして俺に抱きついたり、手を握ったり。

俺も彼女の体温を感じた。

彼女なら俺の生を証明してくれるハズだ。

俺は人間らしく歩きながら公園へと向かった。

公園に近い駅で何やらモメている連中がいた。
「本当にやめてください」

泣きそうな少女、もしかしたら既に泣いているのかもしれない。
「ハァ?カラオケ行こうって言ってるだけだろ?オイ?」

二人のチンピラが塾帰りであろうか?

女子高生に強引なナンパってところか?吐き気がする。
「何泣いてんの?慰めてあげようか?ヒャハ」

俺が相手してやるよ!何でだろ?出来る気がした。

不思議な音がした。グシャ、とかグチャって音がした。

俺がマンホールを持ち上げたいと思ったら本当に持ち上がってしまった。

そしてそのままチンピラの一人の頭を潰した。
「い、嫌ァァァ!!」
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