菜綱の夜
俺は消されるのか?ここで、菜綱にも会えず。

いく、郁子にも会えずに
「お前が消えるのは二日後だ。月が最も大きくなる時、成田冬至の時間は終わる。明日、もう一度ここに来い!妹に会わせてやる!」

なんだと?
「それは本当か?妹は死・・・」

俺が死んでるって事は妹は生きてる?
「やっと、自分の死を受け入れられたのか?」
「俺は死んでない!」
「なら、今までお前が向かった夜にもう一度向かわなければならない。おのずと答えがでる。」
「俺が向かった場所って事か?」

ユタロウはこくりと頷いた。
「・・・約束は、守れよ」
「俺は嘘はつかない!」

その時ほんの少しだけどユタロウが笑った気がした。
「わかった。・・・ありがとう」

俺はそのまま地を蹴った。

するとユタロウのバイクのエンジン音がけたたましく吼え聞こえなくなった。

今からこの五日間で向かった場所?

ただでさえ記憶が消えかかっているのに思い出すのは難しかった。

人間の体とは脳を動かすためにある装置なんじゃないだろうか?

そして脳は記憶や思考なんかを保存しておく巨大なハードディスクみたいな物。

だとしたら体も無ければ記憶装置もない俺は過去を思い出す事は可能なのだろうか?

もう俺は死を受け入れていたのかもしれない。

だが不思議な事に俺の体は学校の方へと向かっていた。

学校の体育館前にはあの少年がいた。あの少年?
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