菜綱の夜
「何しているんだ?」

俺は少年に話しかけた。

少年はワッと驚いて俺を見た。
「何してるんですか?」

この少年は自分が死んでしまった事を覚えていないようだ。

俺は手を地面につくと少年に土下座をした。
「えっ?どうしたんですか?」
「君は死んでしまっている。それも殺したのは俺だ。悪戯のつもりだった。夢だと思っていた。許される事じゃない!君を殺したの事実なんだ!」

少年は驚きもせず言った。
「あぁ、俺死んでますよね?皆気づいてくれないですしね。でも一つ間違ってますよ!」
「何が?」
「俺、わざとこけたんですよ!そしたら打ち所が悪くて、自業自得ですよね。」

そう言った少年の顔は寂しそうだった。

確かに、俺はチンピラ二人の命を奪った。

だが3人殺していたならユタロウの言うロンになっているハズである。

だが笑顔になって言った。

「損ばかりじゃないんですよ!俺の事皆気づいてくれない中で一人だけ話しかけてくれた女の子がいるんです。可愛かったなぁ。でもね!名前が思い出せないんですよ」

俺は少年に別れを告げるとその足で病院に向った。

明け方近くだったが構わず俺は走った。

飛べば良かったんだろうが、走りたかった。

病院に着くと俺は扉から中に入った。
「お待ちしておりました。面会ですね?」
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