菜綱の夜
ギョッとして俺は声の聞こえた方に目をやると優しそうな中年の看護士がいた。

そして彼女の言葉の意味も理解していた。

俺はあの男に会いにきた。
「そうです!あの人に会わせてください」

俺の目を見ると看護士は無言で廊下を先導した。

数分間の間俺は何も話さず看護士の後ろをついた。

そしてたどり着いた部屋は何と死体安置室だった。

さすがに怖い。俺は鼓動が早まるのを感じた。
「ここですよ!」
「あっ、はい!ありがとうございました。」

扉を開けるとそこには沢山の人で一杯だった。

俺はその人々の中から前に出会ったあの男を見つけ出した。
「すみません!俺です!」

男は俺を見つけると懐かしそうに近くに来た。
「やぁ、君か!」
「貴方は死んでしまっていたんですね?」
「君と私はこうして会話をしているじゃないか?」
「そうですね!でも貴方はもういちゃいけない存在なんです!」

俺は背中の辺りが冷やりとした。

その自分の言葉は自分自身に返ってきているようだった。
「確かに、私、手術したんですけどね!無理だったみたいですね。」
「お気の毒に」
「貴方は思い出したんですか?どうして死んだか?」

俺は首を横に振った。

俺は確かに原付に突き飛ばされた。

でも確かにあの時妹が頭から血を流していたのを見た。
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