菜綱の夜
「よし!」

俺は小さなガッツポーズを取ると素早く館内に侵入した。
「そういえば俺幽霊だからそのまま入れたんじゃ?」

そんな独り言を言いながら新聞の年鑑がある所に向った。

そこで始めて疑問を感じた。
「今は何年の何月だ?そして俺は何歳?」

それと同時に妹が生きているならあの学生姿の妹が本当に存在するなら、恐らく事故から十年以上はたっている事になる。

妹の事故は五月十三日、1994年、平成6年だった。

俺は恐怖に打ちひしがれながらも平成6年の新聞を手に取るイメージをした。

するとバサバサとページが開く。

あの事故の記事は小さく載っていた。

 [悲惨、幼稚園の門前で一人死亡、一人重態]
『妹を迎えに行った兄高校三年生の男子が原付自転車に乗った十四歳中学二年生に衝突され死亡。妹を庇って撥ねられた所に加害者の少年はもう一度轢きなおしたと幼稚園の保母は語る。兄は妹の安否を確認するために立ち上がった所背中から突き上げられた。兄は即死、妹は頭に大怪我を負い重態。何故轢きなおしたのか不明であり、事件を目撃した保母はあんなしっかりしたお兄ちゃんの命が奪われた事が無念で堪らないと涙ながらに答えた。尚犯人の少年は二時間後に自主したとの事である。』
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