菜綱の夜
冬至は少し驚いた顔をして言った。
「君こそ何をしてる?こんな夜中に出歩いているとお巡りさんに怒られるぞ!」
「ん?ボク?今宵、成田冬至を現象から無に帰しにきたの」
「こんな小さい猫がか?」
「あはは」
「ははっ」

ボクは人の姿になると冬至に抱きついた。
「とーじはロンにならないと信じてたよ」
「菜綱、君のおかげだ!君に出会わなければ俺はもっと沢山の人々を傷つけてたよ。ありがとう!それとごめん」

冬至の顎がボクの頭の上に乗っかった。
「うん!うん!」
「しかし君が神仏の関係者だとは驚いたよ」

ボクの服を見て冬至は言った。
「この服は特別なんだ。ボクが直接手を下す時しか着ない!さぁとーじ、目を瞑って」

ボクに言われた通り冬至は目を瞑った。
「もう目を開けていいよ」
「ここは?えっ?遊園地?」
「うん!遊ぼう!とーじ」

戸惑いながら冬至はボクに手をひかれ園内を回った。

ジェットコースターから始まって一つ一つアトラクションを楽しんだ。

冬至も途中から真剣に笑ってた。

ボクはそれが嬉しくて、とても悲しくて泣きそうになった。

でも笑って冬至を送ってあげないと、ボクは零れそうな何かを引っ込めた。
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