甘夏の恋
去っていく背中を見送りながら私はため息をつく

「大学……か……」

言えないよ…

私の病気の手術成功率がどんなに低いかなんて……

言ったら嫌われてしまう気がして

だから私は誰にも言わないの

私の病気は……そう簡単に治せる物じゃないの…

だから絶対に言わないの
あの人にだけは嫌われたくないから

私はあの人が私に笑顔を向けてくれたら
それだけで幸せだから…

だから神様彼だけは…彼の笑顔だけは私からうばわないで?

そう思いながら私は顔を枕に押し付けて

声を押し殺してに静かに泣いた

しばらくして、落ち着いた私は涙でぬれた頬をパジャマでふいた

人前では泣かない

これは私の幼稚園からのルール

私が泣いてると皆心配するから、

私はふと小さな棚に手を伸ばす

棚の奥深くには資料があるの…私の病気の

―特発性拡張型(うっ血型)心筋症について―
私のこの病気は成功率は極めてひくく10年以上生きられる人は36%しかない

………でも絶対に負けないから

もう私の持っている医学書は暗唱出来る

自分の病気は自分が良く分かっている必要があるから

ーコンコンー
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