甘夏の恋
ベンチに俺を座らせると

ポケットからハンカチを取り出して俺に渡した

「…………」
黙っている俺に悠哉が話し出した

「俺はお前がうらやましいよ。龍也。」

「えっ?」
あまりにも突拍子もない事を言われて驚く俺に彼は困ったように微笑むと

「あんな態度をとっても、皆お前のことを常に心配してたよ」

そうなんだ……

「それにおれ、龍也がずっと俺のこと敵視してたのはのは分かってた。」

「うん…」

「でも、俺は怖がりだから龍也が一人で苦しんでいたのに…
俺は新しく出来た友達が皆龍也のとこに戻ってしまうのが嫌で
あえて見て見ぬふりをしようとしたんだ…

だって何より俺が今まで持っていなかった本当の友達を持っていた龍也が
すごい妬ましかったんだ」

「悠哉………」

「ごめん」
そう言って悠哉はおれに頭を下げてくれた

俺はその時気づいたんだ

こいつには

今の俺では絶対に勝てない

全てにおいて彼は俺を超えていたんだ

綺麗な心を持った悠哉に

いつか本当の友達だと言ってもらえるような

人間になりたいな………

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