雨瞳-アメ-
……なのに。


気付いたら俺は家を飛び出してた。

ジャージ着て、傘持って。


試合が行われる予定だった学校のグラウンドまで、通い慣れた道をひたすら自転車で突っ切った。

もしかしたら……なんて淡い期待を胸に。


校門前に自転車をとめ、運動場に続く階段を降りる。

すでにずぶ濡れだったけど一応傘をさした。


辺りに人の気配はなく、泥沼のようなグラウンドには騒がしく雨が打ち付けている。


「……来るわけねぇか」

「何してんだ、俺」

「バカみてぇ」


自分に何度となく呟きながら、俺はその場を動く事が出来なかった。


俺がいなくなった後に中村が来るかもしれない。

あと1分、あと1分だけ待てばもしかしたら……。





──結局、試合終了予定の夕方を過ぎても、中村が現れる事はなかった──……。
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