雨瞳-アメ-
涙瞳
「げっ最悪。また雨じゃん。部活、筋トレかぁ……」

「雨多いよなぁ、春なのに」


薄暗い世界に降り続く粒、湿気でブレンドされた独特の香り。


次の日の昼休み、いつものメンバーで大富豪をしていた時にダチがそんな事を話し出した。


確かに最近、雨の日が多い。
おかげでサッカーが出来ないから、俺も雨は好きじゃない。

実際、今ちょっぴりテンション下降気味。

だって、筋トレ半端なくきついんだもん……トホホ。


「ほら、次ハゲの番」

「誰がハゲだコラ」


凄む大輔を無視して、俺は窓の方を見た。


……正確には、窓際に座る中村を。


やはり中村は、窓際の最後尾の席でいつものように静かに本を読んでいた。


……あれ?
なんだか様子がおかしい。


いつもの無表情じゃなくて……唇を噛みしめ、辛そうな表情をした中村。

その頬に、一粒の涙が伝った。



見間違いかと思ったんだ、一瞬。


窓に打ち付ける雨が、たまたま中村の頬に落ちてきたんじゃないか、とか。
光の反射のせいじゃないか、とか。

だけどそんな事、あるわけなくて。


制服の裾で目を擦り、小走りで教室を出ていった中村の行動が、その事実を裏付けた。
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