ぼくうつ。
 「えーと、なんだったかな。
ほら、1年生の頃、講義でプログラムならったでしょ。
それでソートってやったじゃん。
なんか数字入力してそれを小さい順とかで並べ替えるヤツ。
それに文字いれたりしたらエラーでるでしょ」

「うん」

「そんな簡単なシステムでも数字と
文字っていう初期値が変わるだけで結果が変わるわけじゃん。
だから、未来のこととかなんていう
もっと複雑なことを予測するためには、
もっと複雑なシステムが必要になるよね。
そうなるとその複雑なシステムには
それに見合った初期値が必要になって、
その初期値ってものを
人間は正確にはかることができないから、
予測できないとかなんかそんな感じ」

 「なんで初期値を正確にはかれないの?」

「えーと、そうだなぁ……
たとえば木の棒があるよね。
それの正確な長さってわかると思う?」

「ものさしとか使えばいいんじゃないの?」

「それでわかるのって結局はだいたいの長さでしょ。
小数点一桁とかそのくらいの。
それよりももっと刹那とか、
さらにそれよりももっと小さい値まで続くような
正確な値ってまではわかんなくない」

「言われてみればそうねぇ……
確かに小さく小さく考えていけばわからないかもしれないわ」

「そういうこと」

彼女のこういう細かいところまで疑問に思うところはスゴイと思う。

頭がいいなぁと思ってしまう。

僕なんかは途中でわかった気になって考えるのをやめてしまう。

その代わりどうでもいいようなことをえんえんと考えてはしまうけど。

そういうところも僕と彼女は似てるのかもしれない。

だから、僕は彼女のことが好きなんだろう。
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