ぼくうつ。
サクラチルヒ

「ねぇ、雪が残ってるよ」

と華子は言った。

それは6年も前のことで、
僕らが大学4年生の1月のことだった。

卒論の提出まであと3週間くらいで、
追い込みで必死の時期だ。
でも、僕が4月から就職する大学での採用者説明会があったので、
二人で暮らす約束をしてた僕らは、
物件を見るついでもかねて、
この町にきた。

気晴らしももちろんかねてだったので、
初日は軽く観光をしようということで、
ホテルに荷物を置いた後、
ふらふらと観光の雑誌を頼りに松本城にきていた。
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