南月さんの迷探偵ファイル
「あ、日子さん戻ってきた。」


と涼也が窓の外を見て言った。ちょうど日子が店に入ってくるところだった。

カランカランと、店のドアが鳴る。



「遅くなってすみません。電波が悪くて…。」


そう言ってホホホと笑っているが、目が笑ってないのは気のせいだろうか。


「後、五分ぐらいで着くそうです。ここに来てなかったのは、お店が忙しかったみたいで…」


日子が口を濁した。

楼は思った。

有り得へんと。

いくら忙しくても、旅館に来る客を、忙しくて迎えにこれへんというのは、あまりにも、おかしい。見ると、餅も、難しい顔で日子さんを見ている。
しかも、それがしょっちゅうだとしたら、とっくに懸水館は潰れているだろうな。

俺達の時だけ、どうして遅れたんだろう。

それに、電車の中でしきりに時間を気にしてた様子やし…。なんか引っかかんねんけどな…。

楼が複雑な顔して悩んでいると、日子の携帯がなった。メールみたいだ。
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