南月さんの迷探偵ファイル
男はまだ餅の存在には気付いていない。

餅も何くわぬ顔で、あちこちの店を見ながら、後をつける。

『東京やしなぁ。どんなもんが置いてあるんやろ♪』

と半分、尾行そっちのけで、観光を楽しんでる部分がある。











――10分後。

CDショップを出てから、男はどこにも寄らず、ちょっとした住宅街の中にある、こじんまりとしたアパートに入っていった。


『ここに住んでるんやろか。見たところ、何の目立つもんもないなぁ。とりあえず、あの男の名前だけでも知っとかなあかんな…。』


餅は男が入っていった、二階の一番左の部屋の前まで来た。


『201号室か。名前は…雪塚?!雪塚って日子さんの名字ちゃうかったっけ。何で一緒なんやろ。偶然やろか…。いやいや、あり得へんやろ。結構めずらしい名字やしなぁ。』


しばらく考えていたが、201号室の前でボーっと突っ立ってたら怪しいので、いそいで階段を下りた。
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