南月さんの迷探偵ファイル
日子の話はこうだった。


―日子の両親が経営する旅館は、東京の旅館街の中でも一番古い旅館だった。古いといっても、キレイだし、それなりに繁盛もしている。

旅館の名前は『懸水館(けんすいかん)』といって、日子は1人娘なので、若女将をしている。

1ヶ月前。
その日は店は客が少なく、大して忙しくないので日子が買い出しに行く事にした。いつもは、板前に任しているが客が少ないから、といって買い出しを代わってもらった。
その買い出しの帰り。従業員用の裏口から入ろうとすると、庭の方から微かに何かの音がした。裏口と庭はすぐ横に位置する所にあるのだ。
日子が庭の方に歩いていってみると、何事もなかったように庭は静かだった。
< 8 / 116 >

この作品をシェア

pagetop