季節の足跡

「…ロード」


父に名前を呼ばれ、あたしは軽く返事をした。


「お前の生き生きした顔を、初めて見たよ。お城で頑張りなさい」


あたしは嬉しくなって、久々に笑った。


「…うん!」





†††

次の日、さっそくお城に行き、書籍部に入部届けを出した。


面接を受け、一週間後に入部許可証が届いたときは、家族みんなで喜んだ(ちょっとユナはふてくされてたけど)。


キラさんに会えて、あたしは変わった。


よく笑うようになったし、楽しいと思う時間が増えた。

明日からは、書籍部の一員として働くんだ。


早く…

早く、あのひとに会いたい。


会ってお礼が言いたかった。



でも、実際はそんなに甘くなかった。


入部してからは、仕事を覚えるのがもう大変。

若いから仕事は少ないよって面接の時言われたのに、あたしにとっては全然少なくない。


キラさんは長官室に籠もりっぱなしで、入部してから早二週間、全く見かけてない。


早くも、泣きそうなあたし…。



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