季節の足跡

「…コレ」


「え?何?」


「コレがいいよ。ドレス」


オレが指差す先には、純白のドレス。

金紗の羽織りものつき。


オレの好みとは違うけど。

君には、純白のドレスが一番似合うと思った。


そのドレスを食い入るように見つめる女王サマに苦笑しながら、オレは扉へと歩を進めた。


ドアノブに手をかけようとした、その時。


「…アズロ!」


名前を呼ばれ、振り返る。



「ありがとう」



そのとびきりの笑顔は、驚くほど綺麗で。


このときは、オレだけに向けられたモノ。


…それが、すごく嬉しくて。


「…どういたしまして」


喜びを噛みしめながらそう返し、執務室を出た。



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