季節の足跡


「聞いた!? 今日、ライトさん来てるらしいよっ!!」


「うそーっ!会いに行こ!!」


パタパタと音を立て、廊下を走っていく数人のメイドの後ろ姿を、私は見送った。


…ライトさん、来てるんだ。


ルチル様と、結婚式の打ち合わせかしら?



ルチル様とライトさんの結婚式の日は、近づきつつあった。


城中の…国中のみんなが、二人の結婚を祝福した。


私も心からお祝いした。



もう結婚するというのに、ライトさんの人気は絶えない。


確かに、格好いいし、性格もいいから、人気なのはわかる。


でも私は、完璧なひとは好きになれない。


何かひとつでも欠点があった方が、魅力的だと思うの。



私は花壇に水やりをするために、じょうろを片手に長い長い廊下を歩いていた。


ぼんやりとそんなことを考えてあた私は、急に飛び出してきた人物に気づかなかった。



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