季節の足跡

「………きゃあ!」


どんっと勢いよくぶつかって、私の手からじょうろが離れる。


私が尻餅をつくのと同時に、バシャッと音がして、じょうろが床に落ちて転がった。



ぽたりぽたりと水が滴り落ちる音が小さく響く。


床に出来た小さな水溜まりに映る姿を見て、私は素早く顔を上げた。



「―――ウィン様…」



濡れた前髪をかきあげるそのひとは、私を見てため息をついた。


「…またあんたか…」


「えっ」


途端、血の気の引く音が聞こえるくらい、真っ青になる私。


…そういえば。

ついこの間は、急いで運んでいた食事をぶちまけてしまったような。



慌てて私は立ち上がると、何度も頭を下げる。


「すっ、すみません!私、ぼーっとしててっ!」


顔の熱がどんどん上がっていくのが、自分でもわかった。



< 107 / 142 >

この作品をシェア

pagetop