季節の足跡
ウィン様は、嫌がるルチル様を、無理やり引っ張っていく。
…私に、気づきもしない。
気づいたとしても、声もかけてもらえないんだろうな。
仕方ないの。
これが、普通なんだもの。
「…コイツの近くにいると、巻き込まれるぞ」
―――え?
突然の言葉に目を見張る私に、ウィン様は意地悪な笑みを浮かべた。
「人に迷惑かけるの、得意みたいだからな」
「…何それ、ミカの話?」
眉をひそめるルチル様とは対照的に、耳まで真っ赤な私。
…ずるい、ウィン様。
ただ話しかけられただけなのに、涙が出るほど嬉しい。
このとき私は、いてもたってもいられなくて。
思うがままに、行動してしまった。
近くの花壇から、数本の花を引っこ抜いた私は、そのままウィン様の目の前に突き出した。
ウィン様が目を丸くするのは当たり前。