季節の足跡
「…覚えとく」
告白の返事じゃなかった。
けど、私の名前を覚えてくれることが嬉しくて。
優しいその表情に…胸が高鳴って。
「………はい!」
私は、精一杯の笑顔でそう答えた。
手のひらの中には、緋色の花束。
それに負けないくらい、真っ赤に染まる私の頬。
「サンキュー、ミカ」
するりと、花束が私の手から離れる。
行き先は、ウィン様の手の中。
…やっぱり、ウィン様はずるい。
「…大好き、です」
思わず呟いた私の言葉に、ウィン様はまた笑った。
「さっき聞いた」
何度言っても、言い足りない。
大好き。
大好きなんです。
ウィン様…
少しだけ、期待してもいいですか?
ウィン様の心が、早く緋色に染まりますように。
-緋色の花束 end-