季節の足跡

「は?振り回してんのはお前だろ」


「君も一緒に回っちゃうしね」


「………」


冷静になれ、あたし。


晴れ舞台の日まで、怒鳴る必要はないのよ。



深く深呼吸をしたあたしは、キッと二人を見据える。


「…二人とも、準備は?」


そう訊ねたあたしに、二人は驚きの表情を浮かべた。


「へー。さすがに今日は怒んないんだね」


「いつもこれならいいんだけどな」


…今すぐにでも怒鳴りたいけど、我慢、我慢。


「ちょっと、どうなのよ」


「大丈夫だよ。順調に進んでる」


「俺らに任せろ。あんたは自分のことだけ考えてればいい」


…あーあ。


こういうときに限って、頼りがいのある表情するんだもん。


「…いい臣下を持ったな、ルチル」


兄様に肩を叩かれ、あたしは苦笑した。


悔しいけど…その通りだよ。



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