季節の足跡

「…お前、たち悪いなぁ」


「そんなことありませんけど」


「…無自覚なのか?」


苦笑いのアルファと、ケロッとしているライトの会話は、もうあたしの耳には届いていない。


…持たない!

あたしの心臓、式終わるまで持たないッ!


「あ、姫様」


「えっ!?」


あたしが素っ頓狂な返事をすると、ライトはクスクスと笑いながら言った。


「…散歩、しませんか?」


「………するっ!」


アルファとジークにまた後で、と声を掛け、あたしとライトは庭に出た。





「あーっ、気持ちいい!」


「いい天気ですね」


今日は天候に恵まれ、春の陽気がぽかぽかと身に染みる。


隣を歩くライトの横顔を、あたしはちらっと見た。


「…ねぇ、ライト」


「はい?」


「いつになったら敬語やめるの?」


「…いつでしょうね」



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