季節の足跡

はは、と笑うライトに、あたしは顔をしかめる。


「じゃあ、いつになったら"姫様"って呼ぶのやめるの?」


いつだってそう。


ライトはいつまでもあたしに敬語だし。

"姫様"って呼ぶし。


…何か、嫌なんだもん。



不意に、ライトが足を止めた。


「…ライト?」


半歩遅れて、あたしも立ち止まる。



「姫様からキスしてくれれば、敬語も"姫様"もやめます」



にっこりと笑うライトは、サラリととんでもないことを言い放った。


「………は!?」


―――キス!?


「今まで、姫様からしてくれたこと、一度もないじゃないですか」


…ないけど。

確かにないけどっ!


「無理無理無理ーッ!恥ずかしいッ」


ぶんぶんと頭を横に振るあたしに、ライトの視線が突き刺さる。


あ―――、もうっ!

そんな顔で見ないで!!



< 124 / 142 >

この作品をシェア

pagetop