季節の足跡
「…いいんですか?ずっと敬語でも?ずっと"姫様"でも?」
「………意地悪」
あたしがぼそっと呟くと、ライトは「そんなことありません」って笑った。
そんなこと絶対ある。
でも…
あたしはライトの目の前に移動した。
心臓がばくばくと、うるさいくらいに鳴ってるけど、しっかりとライトの瞳を捉える。
―――でも、好きなの。
敬語と呼び名が、あたしたちの間に壁をつくってる気がして。
だからあたしは、その壁を壊したい。
徐々に近づく、ライトの顔。
一向に静まってくれない心臓。
あたしはぎゅっと目を瞑ると、ライトとの僅かな距離を一気に埋めた。
「………あれ?」
つもりだったのに。
そこにいるはずのライトの姿が、なかった。
…正確に言えば、しゃがみこんでいた。