季節の足跡

あたしとライトがいるのは、大広間の扉の前。


これから、結婚式が始まる。


「俺だって、緊張してますよ?」


「…嘘ばっかり」


あたしが頬を膨らませると、「嘘じゃありませんよ」って笑うライト。


緊張してたら、そんな笑顔出せないから、絶対。


「姫様、深呼吸です。はい、吸ってー、吐いてー」


「…あはは、何か戴冠式の日を思い出すわ」


確かあの日も、あたしはガチガチに緊張してた。


でも今と同じように、ライトに深呼吸を促されたんだ。


…いつもライトは、あたしの背中を優しく押してくれる。


「ありがと、ライト。ちょっとほぐれたよ」


あたしが微笑むと、ライトも笑顔をくれる。


「よかったです。…では、参りましょうか?」


差し出された手に、あたしは自分の手を添える。


「…うん!」


そしてそっと、扉を開いた。



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