季節の足跡

「…そっちの方がいいよ」


その言葉に、あたしはパッと顔を上げる。


「今の方が、生き生きしてると思う」


それは…キラ長官に会えたからです。

あたしの世界を、キラ長官が変えてくれたからです。


そう言いたかった。

でも、言ってはいけない気がして、口を開けなかった。


「…この国は、素敵だよね」


何も言わないあたしを気遣ってか、キラ長官は突然そう言った。


「自然豊かだし、町の人はみんな人柄がいい」


キラ長官は、あたしの頭をポンとたたく。


「今を楽しまなきゃ、勿体ないよ!」


「…キラ長官…」


キラ長官の言葉は、あたしの胸に優しく響く。

すうっと体の中に溶けて、新たな気持ちを創り出す。


…もっと。

もっとこのひとに近づきたい。


もっと…そばにいたい。



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