季節の足跡

読み終わった手紙を、もとのように畳む。

その手紙を、あたしはそっと机に置いた。


―――キラ長官。


この長官室から、キラ長官の匂いは消えつつあった。

あの日溜まりのような、暖かい温もりも。


キラ長官が、そばにいた証。


その証が、消えてなくなろうとしていた。



「…っ、キラ長官…!」


そのまま、あたしは泣き崩れた。



机の上には、初めて"秘密仲間"になったときに撮った写真が飾られている。

写真の中であたしは、思い切り笑っていた。


写真立てが、静かに倒れた。

あたしはただ、悲しみの涙で頬を濡らす。



愛しくてたまらなかった、あのひとの名前を、何度も呟いて。






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