季節の足跡

「…くそっ、覚えてろよ!!」


そう吐き捨て駆けていく相手の背中を、俺は苦い顔で見つめる。


「負け犬の遠吠えかっつーの!」


口の中に溜まった血の固まりを、ぺっと吐き出す。

ちっきしょ、思いっきり殴りやがって。


…まぁ俺も思いっきり殴ったが。



今日も何かと絡まれていた俺は、いつになく不機嫌だった。


特に働くこともなく、ふらふらと城下町をほっつき歩いてる俺を、両親は嘆いた。

両親を困らせるつもりはないが、俺なんかが仕事始めたら、五秒で喧嘩沙汰だ。


仕事するだけ、ムダ。


例によって、今も城下町を散歩中だった。

ところが裏通りに入った瞬間、殴りかかってくんだもんなぁ。


俺は右手を顔の前でぐっと握り、その拳を冷たく見据えた。




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