季節の足跡

対して男は、にこにこと俺を眺めつつ、逃げようともがく盗人を、俺をつかんでいない方の手でがっちりとつかんでいた。


俺が訝しげに眉をひそめると、男は何かを思いついたように口を開く。


「そうそう、自己紹介だな!俺はカルム城の戦闘部隊長、ダン」


「…その前に、腕、痛ぇんだけど」


するとダンと名乗る男は、ああ悪い、と手を放した。

途端に、痛みから開放される。


「で、君の名前は?」


「………デュモル」


戦闘部の隊長が、何故表通りを盗人捕まえる為に駆けずり回ってたのかわからない。

ただ、今後関わることもないと思い、俺はぶっきらぼうに答えた。


ところが、相手は全く予想外な言葉を口にした。


「よし、デュモル。戦闘部に来い!」


「………はぁ!?」


間抜けな返事を返す俺の腕を、戦闘部隊長はまたもやつかんだ。



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