季節の足跡
世界なんて、真っ黒だって思ってた。
あたしと母を捨てた、父。
そのすぐ後に再婚する、母。
その当時のあたしは、大人の考えがさっぱり理解出来なかった。
ただ、世界は真っ黒なんだって、それだけはわかった。
だったらせめて、あたしは白でありたいと思った。
何も考えなくていい。
嫌な気持ちも、醜い心も。
黒いものを覆い隠す、白に。
"白いあたし"は楽だった。
何もなくても、ただへらへら笑って。
そうすれば、黒い塊に覆われることはないから。
…けど、そのかわりに、全てが味気ないものになった。
どんなに美味しい料理も、子供同士の遊びも。
ただただ、真っ白になった。
でもあたしは、これが正しいと信じていた。
あのひとに、出逢う前までは。