季節の足跡
正論を言ったまでだったが、どうやら相手は勘に障ったらしい。
急に胸ぐらを掴まれた。
「…調子のんなよ」
低い低い、脅しを含む声音。
間近でそう囁かれても、私は眉ひとつ動かさなかった。
…どうして、放っといてくれない?
勝手に絡んできて、怒って。
いい迷惑なんだ、こっちは。
感情のない瞳で、相手を見た。
「…放してくれ」
「ヤダね。誰が放すか。おい、お前ら!」
そう言って仲間を振り返った相手の隙をついて、私は相手の腕を振り払う。
そのまま、本を抱えて走り出した。
「ふざけんな!!」
後ろから、叫び声が聞こえた。
追ってくる足音も。
ただ私は振り返らず、ひたすらに走った。