季節の足跡
†††
「お母さん、あたし、お城で働きたい」
あたしがそう言った時の母の顔を、今でも覚えている。
怒るわけでも、悲しむわけでもなく、母は笑った。
「…あなたがそうしたいなら、いいわよ?」
「本当?」
「ええ。でも、どうしたの?いきなり…」
そこで、あたしは口をつぐんだ。
さっき出逢った人。
"キラ"って名前の人。
その人は、あたしが泣き止むまで、黙って側にいてくれた。
それから、気づけばあたしは今までの気持ちを、全部キラさんに打ち明けていた。
そこでキラさんは、こう言ってくれた。
"お城の書籍部へおいで"
聞けば、キラさんはその書籍部の長官で、毎日が楽しいんだ、って教えてくれた。
キラさんの側に、いたいと思った。
あの時、あたしの白の世界が、ほんのり色づいた気がしたから。
「…側に…いたいなって思う人がいるの」
そう言うと、何だか顔が火照ってきた。
あたしは両手を頬にあてると、ニヤニヤしている母が目に入った。