季節の足跡

もともと、国の王ならまだしも、姫なんて興味のなかった俺。


贅沢な暮らしをしてるイメージしかなくて、どうでもいいと思ってた。



その考えが覆されたのは、戴冠式の日。


国王が死んだ。


それは、国中を震え上がらせるほどの大事件だった。


後を継いで即位するのは、その娘。

国民が困惑するのは、目に見えてた。



俺も例外なく、その一人。


おそらく政治なんかに興味がないであろう少女が、国を治めるなんて無謀すぎる。

この国も終わりか、とまで考えた。


戴冠式の日、国民はスピーカーから流れる声で、新たな王を判断するしかなかった。

音声じゃ、表情が見えない分、気持ちが伝わりにくいのに。



けど、不思議なことに。


アイツの声からは、はっきりと気持ちが伝わってきた。



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