季節の足跡

国王…父親が死んで、その役目を任された。


悲しみに暮れるか、傲慢になるかのどっちかだと思ってた。


けど、アイツは。


現実を受け止め、涙を堪える様子を微塵も見せなかった。


むしろ凛とした透き通るその声には、力強さを感じた。


自分に任せろと言うわけでもなく、他人に任せると言うわけでもなく。


絶妙な位置から、アイツはスタートした。



アイツのスピーチを聴いて、国民は過度な期待を抱いたわけでもなく、かといって大きな不安を抱いたわけでもなかった。


それは、アイツに出来た最善のスピーチだった。


そこで俺は、初めて"姫"に興味を抱いた。


それが最初のキッカケ。





ある日、新王補佐募集の知らせが国中に渡った。


それは、新王の力を見定めるのに、いい機会だと思った。



< 88 / 142 >

この作品をシェア

pagetop