季節の足跡

ダメもとで送った書類審査の合格通知が届いたときは、正直驚いた。


少しの希望を胸に抱えながら、俺は面接に向かった。



面接で訊かれたことは、アイツ自身が考えてないのがまるわかりだった。


質問内容くらい自分で考えろよ、と口出ししたくなるのをぐっとこらえ、俺はいつもの態度で言った。


『俺のことはいいから、あんたのこと教えて』


確か、こんな感じに。


俺が来たのは、自分をアピールする為じゃない。

王の器を測るためだったから。



怒鳴られたら、それでもいいと思った。

出てけと言われれば、出ていくつもりだった。


けどアイツは、そのどちらでもなく、きちんと俺と向き合った。


人の意見を取り入れる。


それは簡単に出来そうで、出来ないモノ。


臣下の声を聞くか聞かないかで、国は大きく変わる。



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