季節の足跡

その後の会話の流れで、あのスピーチはアドリブだと知った。


それは予想外で、少なからず感心した。

バカかコイツとも思ったが。



王としての気品は、欠片もない。


人の上に立てるような力も不十分だろう。


…ただ、何かが。


王としての器がある、とハッキリと示していた。



その何かは、未だにわからない。


アイツの性格なのか、考え方なのか。


わからないが、あのとき…確かに感じた。



だから、あんな質問をした。


『あんたは自分の命と国の命、どっちが大切だと思う?』


アイツの答えは、今でも鮮明に覚えてる。


『…国も大切よ。でも、自分の命も大切。国の命を背負ってる分、あたしの命はもっと重いから』


…完璧な、答えだった。



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