季節の足跡

「………」


今にも口をついて出そうになる言葉を、必死に呑み込む。


この気持ちは、伝えないと決めた。


困らせたくないから、なんて綺麗事かもしれない。


ただ…

口にしたら、諦められない気がしたから。


そんな情けない理由。


「それでね、そのあとね…」


無邪気なその横顔を見て、俺は静かに笑った。


…俺には、そんな顔見せないくせに。


本当、困ったオウサマだ。



俺の心を乱すのは、きっとルチル…あんただけ。


乱された心を元に戻すことが出来るのも、きっとあんただ。



だから俺は、俺の為に。


あんたに一生仕えよう。





伝えることのない想いは、この影にしまい込むから。






-漆黒の影 end-



< 93 / 142 >

この作品をシェア

pagetop