季節の足跡
「………」
今にも口をついて出そうになる言葉を、必死に呑み込む。
この気持ちは、伝えないと決めた。
困らせたくないから、なんて綺麗事かもしれない。
ただ…
口にしたら、諦められない気がしたから。
そんな情けない理由。
「それでね、そのあとね…」
無邪気なその横顔を見て、俺は静かに笑った。
…俺には、そんな顔見せないくせに。
本当、困ったオウサマだ。
俺の心を乱すのは、きっとルチル…あんただけ。
乱された心を元に戻すことが出来るのも、きっとあんただ。
だから俺は、俺の為に。
あんたに一生仕えよう。
伝えることのない想いは、この影にしまい込むから。
-漆黒の影 end-