ネガイゴト
言いながら、タカヤの前にしゃがみこむ。

不揃いに伸びたタカヤの髪を掴むと、タカヤは怯えたように顔をしかめる。
           
            
「キモチいいだけで終わりゃあ、サツにぱくられたりしねぇんだよ。
この頭ん中に叩き込んどけ」
            
                  
いったい、どんな顔色になっているか、もうタカヤ自身は気にもならないのだろう。

骨も内臓もやられ始めて、時々、タカヤの息に血の匂いが混じっていることを、沼田は気づいている。

いまさら、シャブを止められるはずもないし、第一そんな気はタカヤにはまるでないだろう。
           
              
もともと、使い捨てるつもりで拾った、頭の足りないチンピラ。

勝手にシャブに溺れて、勝手に死んでいけばいい。

そう思っているはずなのに、どうして、タカヤを目の前にすると、こんなに気持ちの落ち着きどころを失ってしまうのか。

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