うちの所長知りませんか?
少しあっけに取られてしまった僕など放って、不知火妹は淡々と続ける。

「二時限目の化学では、教師の指示に従わずに薬品を混ぜたそうです。結果、研究会の部費から爆発で割れた試験管分が引かれました」

「……」

「三時限目、体育でしたが、運動が不得手な所長はサボタージュを論理的に決行し、体育教師をひとり半ノイローゼ状態にしたそうです。証言では、強制的な運動指示が人間の精神、そして筋肉へ及ぼす疲労レベルの見解など三十分ほど」

「…………」

「四時限目、所長の好きな現国でしたが、所長は担当教師の日本語発音が気に入らないと講義し、クラスを巻き込んでのイントネーション、アクセント講座へ移行したそうです」

「………………」

「五時限目、英語の授業でしたが、所長は英語、さらに数ヵ国の言葉を理解しているので、この時間、ノートは一切取らず紙飛行機の新型を製作することに費やしていたようです」

「……………………」

「ご理解いただけましたか? 所長は変人と」

「よくわかりました」

肩を叩いてくる白鳥さんに、もう失笑でしか返せない僕がいた。

そんな人なら、いっそ行方不明のままのほうがいい気もする。
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