うちの所長知りませんか?
とん、とん、と、白鳥さんが木刀で床を突いた。

かなり詰まった音がする……どうやら、元演劇部らしいけど、その木刀自体は本物らしい……。

あれで殴られるような事態だけは回避したいと切に思った。

白鳥さんは断言する。

「所長が自ら姿をくらますなどありえません」

「なぜですか?」

「なぜって、今日は部活、研究会双方の生徒会視察の日です。今日の活動内容いかんによって、今後の部費配分も多少の影響が出るのですから、所長がサボタージュなどありえません。ただでさえ研究会は部に対して費用が少ないというのに」

「……」

「? ほえ? 先輩、どうかしましたっちゃ?」

ひらひらと真美ちゃんが僕の前で手を振る。

「ははは、真美ちゃん、僕さ」

「はい。忘れてたんですね、生徒会視察の日」

「……はい」

こうなったら迅速に大恩寺さんを見つけ出すしかなさそうだ。

そうして早く研究室に戻って、真面目に占い研究会として活動をしていないと、生徒会に次の部費を削減されてしまう。

本当は、こんな人達放ってっちゃうのが一番早いけど……


とん、とん、とん……

あそこで木刀を持っている人に立ち向かう勇気はありません。
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