うちの所長知りませんか?
「あのですね、今日の大恩寺さん、なにか変なところはありませんでしたか?」

「「あら、大恩寺さんはいつでも変なのよ、ねぇ?」」

双子にシンクロ会話で同時に「ねーっ」と首を傾けられる大恩寺さんって、どれほどだろう。

一般的じゃないのはそうだろうけど、並の変人でもなさそうだ。

ひとりずつ質問することにする。

まずは現国の先生。

「大恩寺さんは、なんかイントネーションが気に入らないって怒ったんですよね?」

「そうよぉ、大恩寺さん、言葉に厳しいからぁ」

参っちゃうのよぉ、と片手で空気を叩く姿は、もうただのおばさんにしか見えない。

「その時、なにか妙なこととかは?」

「えっ、大恩寺さんはいつも」

「すみません、『大恩寺さんとして変なところ』はありませんでした?」

化学教師の時と同じテツを踏むところだった。

現国教師が、「ああっ」と手を打つ。

「大恩寺さんね、あの時クラス全体に発音レッスンしてくれたの。ただね、その時に引用したのがあれだったの、あのほら、『探し物はなんですか~♪』っていうのね」

なぜに井上陽水ですか……

いや、僕もあの歌好きだけど。
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