うちの所長知りませんか?
僕ら五人は、そこを訪ねた。

ノックをすると、ドアがガラリと開く。

ぺったりした黒髪の男子が顔を出した。

「なにか?」

と、上から下まで見据えられる。

僕はできるだけ穏便に、

「あっ、ここって、『推理小説研究会』ですよね?」

と、笑顔で訊いた。

「あのですね、ここに大恩寺めも」

「うちの所長知りませんか?」

ビシュッ、と、その脇から走ったのは、光沢さえある木刀。

白鳥さん、せっかくの僕の営業スマイル、どうしてくれるのですか。

せっかく穏便にいこうと思ったのに、相手が腰を抜かしているではないですか。

「くっ」

「あっ!!」

というか、きびすを返して部屋の中に逃げ――逃げ!?

「こら待て!!」

と、僕が彼を捕まえる前に、不知火双子が動いた。

「「動くなです」」

「いっ!?」

その手には、それぞれ文庫本……それが、逃げようとした彼の首筋に、背表紙を向けて突きつけられていた。

な、なぜその文庫本がナイフのように思えるのだろう。

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