うちの所長知りませんか?
立ち上がった大恩寺さんは、僕の前で止まった。とても長身で、僕なんか彼の肩くらいまでしかない。

「目的はね、君の勧誘なのさ」

「勧誘?」

「そうとも。なぁ、取り引きをしようじゃないか、占い研の〝女帝〟」

その名前、今つけたのだろうけど、やめてほしいと切に思った。

彼は言う。

「僕はね、推理研究会を部に昇格させたいんだ。だけど、いくら生徒会長と言っても四人の研究会を部にあげることはできない。もうひとり必要だ」

「もうひとり……まさか」

「そう、君に目をつけた。〝女帝〟にね。君がうちに入ってくれれば、申し分ない。今日のことで、君の洞察力や観察力は充分に証明されたからね」

そうか……そのために……

「推理小説研究会を、利用したんですね?」

「ふふ、利用じゃあない。フェアな賭けだよ」

「賭け?」

「そう。僕は彼らに持ちかけた。もしも僕を誘拐、監禁し、みんなが僕を発見できないままに終われば、次の部費を底上げしようってね。その代わり、僕は監禁されるまでにヒントを残す。これはね、ヒントを残す僕と、それを抹消しながら僕を誘拐する彼らとの、勝負だったんだよ。そして、君は見事僕を見つけた」
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